like crap

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くだらない事や、さほど必要の無さそうな事を一方的にばらまきます。

嫌いになものが好きになるには理由がある

昔は嫌いだった食べ物が、今は食べれるようになるってことが往々にしてある。僕の中ではトマトと日本酒と椎茸がその代表格だ。

 

これら3品とも、ある日突然好きになったのだ。よく言う「食わず嫌いだったわけではない」いずれも、食べて「不味い」と感じて嫌いになったはずなのに、なぜか急に美味しいと感じた。

 

最近になってやっとその理由がわかった。

 

椎茸は裏側のビラビラがまず気持ち悪い。匂いも独特で、なんでこんなのが食べられるんだろう?と思っていた。きっと、椎茸が嫌いな人は同じように思っているだろう。

 

先日、椎茸を栽培している友人と居酒屋に飲みに行ったときに「この店は俺が作った椎茸を卸している店だから旨いよ~」とそそのかされ、椎茸を炭火で焼いたものに塩コショウをしただけの、いわゆる焼き椎茸を無理やり食べさせられた。

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旨い!

 

なんだこれ!!

 

あれほど毛嫌いしていた椎茸が「美味しい」のだ。自分でも不思議な感覚だった。椎茸ってやつは、味も見た目も気持ち悪いはずで、ビラビラを見た瞬間に食欲なんか消え失せる代物だったはずの椎茸が「美味しい」と感じたのだ。

「俺、椎茸は苦手だったのに、この椎茸はなぜか美味しいね?」と友人に言うと、待ってましたとばかりに「原木だからね」の一言。

ん!?原木??何?

そこからは、昏々と1時間ばかし原木椎茸の生産方法と、その素晴らしさについて熱く語られてしまったのだが、あまりにもくどい話のため割愛する。

 

椎茸の生産者である友人の話を要約すると、現在のシイタケ栽培は菌床椎茸と原木椎茸に分かれており、今は生産効率の良い菌床椎茸が全体の9割を占めるほど主流になっている。

「菌床椎茸」の画像検索結果

菌床椎茸は大量の栄養剤で固めて殺菌処理をされた、おが屑でできたブロックの菌床を使い90日程度の短期間で大量に生産できるため、コストはかからないが肝心の椎茸本来の旨味がないとのこと。友人曰く「菌床椎茸は栄養剤を食べているようなもんだね」と言っている。

 

それに対して、原木椎茸はナラの木を使って250日以上の長期間寝かせて無農薬で栽培する。1m程度に切った原木を何千本も移動・運搬するのは、おそろしく重労働だが、そのぶん味も香りも良い椎茸ができるとのこと。

その後も、居酒屋で椎茸の肉詰めを注文し食べてみると、これまた肉汁の旨味と椎茸の香りのマリアージュにノックダウン寸前の美味しさ!しかも、椎茸の、あの憎々しいビラビラが肉で隠れているから、見た目まで美味しそうに見えてくるのだから不思議なものだ。

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そんなこんなで、私の椎茸嫌いを一撃で変えてしまう力が原木椎茸にはあったのだ!

これまで、椎茸をスーパーなどで見たときに「原木」か「菌床」かという意識や選択肢はなかった。というか、椎茸嫌いの僕は見向きすらしていなかった。

ところが、原木椎茸のあの味をもう一度味わいたいと思ってスーパーの売り場を探してみると、原木椎茸が無いのだ。どこのスーパーを探しても、あるのは菌床椎茸ばかり。

 

しばらく椎茸の旨さを忘れかけていたころに、たまたま寄り道した産直で発見したのだ!見まごうことなき原木椎茸ちゃん。袋のシールに燦然と輝く「原木」の文字。産直だけに、売り場には生産者の顔写真と椎茸栽培への熱い思いが書かれている。すばらしい!

 

その椎茸栽培をしている友人と一緒に飲むときは日本酒が多いのだが、日本酒が好きになったのも椎茸同様に最近の事だ。

大学生のころにコンパや飲み会で日本酒を沢山飲んだ時に悪酔いし、嘔吐したことがある。それ以来、日本酒のにおいを嗅いだだけで、嘔吐したときの記憶が甦ってしまい日本酒を避けていた。その後も何度か飲む機会はあったが、やはり美味しいとは感じなかった

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数年前、僕の姉がアメリカ人(白人)と結婚し、日本の伝統文化を体験させてやろうということで近くの酒蔵見学に行った時のことである。

一通り酒蔵の見学コースを見て回った後に、義理の兄のトーマスが試飲コーナーで「旨いうまい」と日本酒をたしなんでいるではないか!

しかも、トムにお酒を勧めているのは、現在酒蔵で杜氏をしている大学の後輩だ。僕が通っていた東京農大には醸造学科というのがあり、そこには酒蔵の息子や味噌・醤油屋の息子などがたくさんいたのだ。

僕もその後輩に試飲を勧められたが「僕は日本酒はあんまり得意じゃないから」と断ると「マジ旨いっすから飲んでみて」とグイグイ来るので、しかたなく飲んでみると、たしかに「旨い」。

 

後輩は満面の笑みで「先輩が若いころに飲んで嫌いになった日本酒は醸造アルコールが添加された安い日本酒でしょ。たくさん飲むと僕でも気持ち悪くなりますよ~」と言う。醸造アルコール!?何?

日本酒は日本酒でしょ。と思っていた浅慮極まりない僕だが、後輩の話ではどうやら日本酒には香りを引き立たせたり、スッキリとしたキレの良い味を出すためにアルコールを添加するものもあるそうだ。安いパック酒では、醸造アルコールで2倍に薄めたいわゆる二増酒といわれるものがあり、それを大量に飲んだから嫌いになったのではないかとの事。

 

僕が飲んで美味しいと感じたのは醸造アルコールが入っていない、いわゆる「純米酒」だそうだ。

その後、美味しいと感じた日本酒の味が忘れられずに、割烹や和食の店、はたまた居酒屋などに行くと純米酒を注文することが格段に増えた。

今では、やれ「田酒」がいいだの「八仙」が旨いだの地酒通を気取って、いっぱしの酒好きに成り下がっている僕。

 

日本酒も椎茸も、本物の美味しさを知らなかったと言える。もちろん、菌床椎茸がダメというわけではない。流通の事を考えると、形も整っているし、早く・安く消費者に届くことは良いことだだ。味以外は・・・。

 

スーパーに並んでいる野菜なんかでも、トマトなどは陳列棚に並ぶ頃にちょうど赤くなるように完熟前の早めに収穫されており、トマト本来の甘みが味わえない。これも、流通を考えると仕方がない。味以外は・・・。

 

本当に美味しいものは、なんなのかを考えさせられる時代。昔、亡くなった祖母が言っていた「人は三里四方のもので生活ができる」と。

そういえば、近所の大工の棟梁が言っていたな~。「今は家を建てるときに使う木も外材が多くなった。木も生きているから、ほんとうはその土地にある木を使うと、その気候に合っているから家も長持ちするんだよな~」と。

 

大量消費社会の今だからこそ考えよう。本物ってなんだろうと。